[読書メモ]『生きるための経済学』

p119
コンピュータを電子工学の成果のように思っている人が多いが、じつのといころ、記号論理学の副産物なのである。

p135
日本・中国・インドなどのアジア世界では、思考は脳ではなく腹部で行われ、脳はたんなるデータの蓄積器官にすぎないと考えられてきた。

p191
激しい受験勉強など、誰もやりたくはない。私だってやりたくはなかった。ところが、呪縛にかけられて自我を失った子どもは、もし受験勉強をしないとして、自分がいったい何をやりたいのかが、まったくわからない。

pp194-195
世間では、東京大学の先生ともなると、たくさん給料をもらって、皆から尊敬されて、温かい家庭を持ち、ゆったり幸せに暮らしているだろう、と思われているようである。しかし、実際のところ、筆者もふくめた東大教員の給料はエリート・サラリーマンよりはるかに低い。その上、同僚の先生方は、特に幸せそうに見えない。むしろ、口がへの字になっていて、眉間にしわがより、陰鬱な顔をして、自分は誰かに嫌われていないだろうか、誰かが私のことを馬鹿にしているのではにだろうか、いつか誰かに陥れられるのではないか、というような漠然とした不安を抱えている様子の人も少なくない。

p247
今思えばこれは、アカデミズムの常套手段の一つに直面していたことがわかる。話の都合の悪い部分を「前提」に入れてしまって、その前提がどれほどおかしいかについては、同じ業界の内部では考えないことにするのである。こうして一つの分野には、最低一つの「盲点」が生じることになる。私は学問分野というのは、この盲点によって定義され、その共有によって成立すると考えている。/こう考えると、学問研究がなぜ成功しないかがすぐに理解できる。たとえば経済学者と生態学者とで、互いの分野を尊重しながら共同研究をやろうとすると、何が起こるのであろうか。双方の知識が組み合わさって新しい視野が開けるかというと、そうはならない。逆に、両者の盲点が共に幅を利かせるようになるので、単独でやっている場合よりも、世界が余計に見えなくなるのである。

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